2025年3月に発表されたキングセイコー「ヴァナック」が登場した。その量感あるケース、鏡面仕上げの外装、ずっしりとしたブレスレットは、見る者によって「やりすぎ」とも「唯一無二」とも映る存在感を放つ。本稿では、ネイビーブルーの文字盤を備えるRef.SDKV003を実際に手に取り、デザイン、装着感、そしてムーブメントに至るまでチェックした。
キングセイコー・ヴァナックは、量感ある造形や光を反射する外装によって強烈な存在感を放つ時計だ。その印象は人によって「やりすぎ」とも「唯一無二」とも映る。特徴的なのは、シンプルなモデル名である「ヴァナック」。余計な修飾語を必要とせず、この名だけで独自性を主張する。
その造形はブルータリズム建築を思わせる。1970年代に展開されていたヴァナックの精神を引き継ぎつつも、2025年版は単なる復刻ではない。ベゼルを排し、ボックス型のサファイアクリスタルを大胆に突き出させ、クッション型のケースに仕上げられている。
数ある腕時計の中でもそう多くはない、直線で区切られた平なポリッシュされた面を持つケース。そのかがやきを堪能しよう。
ケースサイドの広い面は鏡のように磨き上げられ、周囲を映し込むほどの光沢を放つ。サテン仕上げとの対比が際立ち、1962年のラドー「ダイヤスター」を連想させるほどの存在感だ。もっとも、指紋がつきやすいため手入れは欠かせない。
実際に手に取ると、その重量感に驚かされる。総重量は192gで、その多くをブレスレットが占める。ラグ幅27mmからバックルに向けて21mmへとテーパードしており、見た目は重厚だが装着感は良好。ブレスレットの駒にはケース同様のファセットが施され、サテンとポリッシュを組み合わせた仕上げとなっている。操作性の高いバタフライバックルも装備される。
文字盤上のストライプ模様と合わせて、70年代の腕時計に見られたブリリアントカット風防を思わせる。
今回のモデルに採用されたネイビーブルーの文字盤は、光の加減で黒にも見える落ち着いた色調だ。光が当たると水平のストライプ模様が浮かび上がり、分目盛りリングと呼応する。紋章を思わせるインデックスは存在感が強く、特に12時位置は「V」を連想させる造形である。中央秒針のカウンターウェイトにも「V」が刻まれており、針とインデックスには蓄光塗料が塗布されている。
トランスパレント仕様の裏蓋からは、Cal.8L45Aを覗き見ることができる。
搭載するCal.8L45Aは、約72時間のパワーリザーブと日差–5〜+10秒の精度を誇る。面取りはないが、ストライプと波模様の装飾により美観を備える。裏蓋のサファイアクリスタルには「King Seiko」のロゴが透かしのように浮かび上がり、リュウズにも同じ意匠が刻まれる。
ケース径41mm、厚さ14.5mm、重量級のブレスレット。キングセイコー・ヴァナックは手首の上で強烈な存在感を放つが、多面的な造形によって意外と威圧感はない。挑発的すぎず、それでいて確実に好みが分かれるデザインである。高い完成度を誇る造形とムーブメントを考えれば、価格39万6000円(税込み)は妥当だろう。
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https://www.rasupakopi.com/
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