映画『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』で登場したサッグ団。
だが現実のサッグ団は、はるかに血なまぐさい。
サッグ団は古来、インドで数々の儀式的殺人を行ってきた恐怖の秘密結社だ。
彼らは19世紀までインド奥地に残存し、秘密の集団を形成していた。
しかし、ふだんから殺人者としての生活を送っているわけではない。
家族と暮らし、普通の職に従事している。
ところが、1年のある時期のみ、「巡礼」の旅に出かけると、
かれらは殺人集団へと変貌する。
血が不吉と考えるかれらの凶器は細い紐だ。
わずか数秒で相手の息の根を止め、金品を奪い、穴に埋める。
団員は一人当たり20年で320人の命を奪い、幹部には1年で900人を殺したものもいたという。
しかし、彼らは金品のためだけに凶行を行っていたわけではない。
死者はすべて死と破壊の女神「カーリー」に捧げられたのだ。
彼らの殺人は信仰の一形態でもあったわけである。
彼らのターゲットは、基本的には旅人だ。
婦人、僧侶、洗濯屋、音楽家、油屋、鍛冶屋、大工、牛を連れた人を襲うのは、
宗教上のタブーとされた。
またインド国民も彼らを支持していたようで、
1835年に北インドでサッグ団掃討作戦を行ったイギリス士官は、
「地主も、判事も、警察も、市当局も、すべて私の意見では、
多かれ少なかれ彼らの共犯者である。
下級警察官は多くの場合、サッグの団員であったし、田畑看守の巡査たちも、
しばしば同団に属していた。」と報告している。
イギリス統治時代、当局は必死にサッグ団を撲滅しようとした。
その結果、彼らは奥地に追いやられ、ついに姿を消した。
しかし、現在でも森の奥で殺人事件が起こると、多くの人がサッグ団の仕業だと解釈しているという。
【画像:19世紀末のサッグ団】