【ベル&ロス最新時計】航空レーダーを41mmのスクエアケースに落とし込む
本作の最大の見どころは、通常の3針ではなく、独立して駆動する3枚のディスクで時刻を表示する点にある。時を示すのはビジネスジェット機のファルコン、分を示すのは多用途戦闘機のラファール、秒を示すのはステルス戦闘ドローンのニューロンだ。ファルコンは12時間で1周し、ラファールは60分で1周し、ニューロンは60秒で1周する。
読み方はシンプルで、それぞれの航空機のシルエット位置を外周側の目盛りに合わせて読む仕組みだ。その背後には発光する軌跡が描かれ、単に時刻を示すだけでなく、航空監視レーダーで機影を追うような視覚体験を生み出している。初見では一般的な3針時計よりも情報の読み取りに一瞬の慣れを要するが、そのぶん機械式腕時計としての楽しさと、デザインを所有する満足感はきわめて大きい。
今回のグリーン表示は、従来のレッド系レーダーモデルとは異なる印象を与える重要な更新点でもある。管制室の表示を思わせる世界観を保ちつつ、次世代レーダースクリーンのようなクールさを加え、アビエーションウオッチとしてのキャラクターをより鮮明にしている。
文字盤のアワーマーカーと目盛りは、反射防止コーティングを施したグリーンのサファイアクリスタル裏面にプリントされている。その下で3枚のディスクが回転する二重構造によって、平面的ではない奥行きのある表示を実現した。上層の固定目盛りと下層の可動ディスクが視線の中で交差するため、まるでレーダー画面を覗き込んでいるかのような没入感がある。
こうした構造では、各ディスクの軽さと剛性を両立させることが重要になる。ムーブメントのパワーリザーブに過度な負担をかけず、同時に変形や摩擦を防ぎながら、3つの表示レベルの平行性を保たなければならないからだ。本作は、デザイン重視の機械式時計でありながら、構造面でも緻密に作り込まれた1本といえる。
ケースにはマイクロブラスト加工を施したブラックセラミックを採用する。サイズは41mm、厚さは10.60mm。ベル&ロスらしい“丸の中に四角”の造形を保ちながら、セラミックならではの耐傷性と引き締まった質感を備えている点も魅力だ。個性的な表示機構に目を奪われがちなモデルだが、日常使いを見据えた実用スペックも押さえられている。
ベル&ロスは1994年に創業し、2005年の「BR-01」で航空計器デザインを時計表現へ本格的に持ち込んだブランドとして存在感を高めてきた。「BR-03」コレクションはその思想の中心にあるシリーズであり、本作はその中でもとりわけコンセプト色の強い1本に位置付けられる。
文字盤上を飛ぶ3機の航空機は、フランスの航空産業を象徴する存在として選ばれている。ビジネス航空、戦闘機、ステルスドローンという異なる領域の機体を1つのダイアルで共演させることで、ベル&ロスが築いてきた航空との深い結び付きを視覚化した。アビエーションウオッチの中でも、計器モチーフにとどまらず、航空の物語そのものを表示機構へ落とし込んだモデルは多くない。
搭載ムーブメントは自動巻きの「キャリバーBR-CAL.327」で、約54時間のパワーリザーブを備える。防水性能は100m。ブラックラバーストラップとブラックPVDコーティングのステンレススチール製ピンバックルを組み合わせ、個性派でありながら日常で扱いやすいバランスに整えられている。見た目のインパクトだけでなく、セラミック製アビエーションウオッチとしての実用性も備えた新作だ。
コメントはまだありません。