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「君の名は。」が生まれた“部屋”【ヒット映画の仕事術に学ぶ。】

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2018年3月12日
josfer
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ロンドンやニューヨークの美術館で開かれる、早朝の美術教室(ギャラリートーク)の参加者は、今まで観光客が多かった。しかし近年、背広を着たビジネスパーソンが、出勤前に顔を出すようになっているという。

世界有数の美術系の大学は、グローバル企業の幹部に向けた美術プログラムを提供し始めている。そこには、フォードやビザといった名だたる大企業の幹部が送り込まれている。

アップル社の創業者スティーブ・ジョブズもデザイン哲学を学んでいた。商品開発に芸術性を盛り込むことで、今世紀最大のヒット商品「iPod」「iPhone」を世に送り出した。

今、世界においても日本においても、経済における競争の局面が、「商品の機能の差別化」から「情緒の差別化」へと変化している――。社会の潮流を予測し、世界的なベストセラーになったダニエル・ピンク著『ハイ・コンセプト』は2005年、そう指摘した。

人々は、自分の美意識に合った商品や芸術性が高いものを所持し、精神的な高揚や満足感を得ることを求め始めている。

こうした付加価値を生み出す商品やサービスは、今までMBAで教えていたような、論理や分析のみで創造することが難しい。ビジネスパーソンたちには、より高度な芸術性や創造性が求められる時代となっている。

この傾向は、AI(人工知能)の発達で、さらに加速する。ロジカルな分析に基づく仕事は、コンピューターにシフトしていく可能性が高い。

本欄では、映画、小説、アニメーションなどにおける「ヒットが生まれた現場」に目を向ける。そしてそこから、ビジネスマンが仕事に「芸術性」「創造性」を加え、感動を創造するヒントを探っていく。

(1) 和歌が詰まった新海誠監督の「書斎」

初回は、少し意外かもしれないが、とっつきやすそうな「環境づくり」というテーマについて紹介したい。

日本映画のここ数年のヒット作として、多くの人が思い浮かべるのは、「君の名は。」だろう。最終興行収入250.3億円という、異常な数字を叩き出した。そしてあまり報じられていないが、世界125の国と地域において配給され、興行収入合計が2億8,100万ドルに達している。日本映画としては、史上最高だ。

この大ヒットによって一躍時の人になったのが、監督・脚本・原作・編集を手掛けた、新海誠氏だ。

新海氏は、様々なテレビや雑誌などの取材で、着想のきっかけを語っている。

新海氏は当初、脚本をつくるにあたって「出会う前の少年と少女を描きたい」という思いが出発点にあった。そして、「どうやって出会わせようか」と考えていたという。

その時に、自室の書斎にあった『古今和歌集』に手を伸ばし、目に入った小野小町の和歌でひらめいた。

「思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを」

(夢の中で愛しい人を見た 夢と知っていたならば もう少し夢を見ていたかった)

新海氏は、この和歌に詠まれた「夢で見ることで、会えない男女の恋心はより切なくなる」という人類普遍の心情を、「夢で入れ替わりながら、すれ違う男女」という形で脚本に込めた。そしてそれが、日本のみならず、世界中の人々の心を掴んだ。

この創作秘話は今では少しずつ知られつつあり、様々なヒントを与えてくれる。しかしここではあえて、「書斎」というキーワードに注目したい。

新海氏は中央大学文学部卒で、自宅書斎に日本の昔話などの数多くの古典の書籍を所蔵しているという。新海氏はそこにある和歌や文学を、じっくりと「孤独な空間」の中で読み、内容を味わうことが出来た。

「映画1本見るくらいのスペクタクルが和歌とか俳句の中にあった」と語る新海氏は、この書斎に、人間の気持ちを動かすための"手持ちのヒント"を、数多く蓄積していたことが伺える。

そしてその空間は、創作の課題を持ち込んでも効果を発揮する。今まで自分が感動した資料や本を引き出しながら、効率的にヒントを探ることができた。

さらには「孤独な空間」は、想像力を高めてくれる。集中して企画や脚本を練りこむことができた。

(2) カズオ・イシグロが4週間で小説を書いた部屋

こうした「空間」の効用は、2017年ノーベル文学賞を受賞して話題になったカズオ・イシグロ氏も語っている。

彼は2作目の小説が成功したことで、企画の持ち込みやディナーと海外旅行への招待がどんどん舞い込んできた。それにより、執筆が進まなくなってしまったという。

そこでイシグロ氏は奥さんと相談し、「クラッシュ」と呼ぶ期間を設けた。資料を大量に読んで、壁一面にメモを貼り、書斎に缶詰状態に入るのだ。それにより、約1年経ってもほとんど書けていなかった『日の名残り』を、たった4週間でほぼ完成させたという。

こうした孤独な環境に身を置くことで、様々なインスピレーションが湧き、物語を進める上での行き詰まりを、次々突破できたという。

(3) レコードが鳴り響く、手塚治虫の"男女禁制"の空間

「漫画の神様」と言われる手塚治虫氏も、「クリエイティブな空間づくり」にこだわった作家の一人だ。

手塚氏は、「女人禁制」どころか「男女禁制」の"マンガ執筆室"を持っていた。1週間のうち5日はここに寝泊りするが、入れるのは奥さんだけ。編集者も、アシスタントも、マネージャーも入れない。手塚は「こんなとこに入られたら、もう1日、案が出なくなる」と語っていた。その孤独な空間を大切に守り、創作の原動力にしていた。

その「密室」で作品の世界に入る際、手塚氏はレコード音楽を活用していたという。時代物を書くならクラシック音楽を、少年漫画を書くならミュージカル音楽を大音量でかける。選曲もこっており、『ジャングル大帝』の最終回執筆のときはクラシック音楽で、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」をかけていたらしい。

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